人生の香り No43

2015.06.30



薔薇116 


薔薇111 


そんなにもあなたはレモンを待つてゐた

かなしく白くあかるい死の床で

わたしの手からとつた一つのレモンを

あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ

トパアズいろの香気が立つ

その数滴の天のものなるレモンの汁は

ぱつとあなたの意識を正常にした

あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ

わたしの手を握るあなたの力の健康さよ

あなたの咽喉に嵐はあるが

かういふ命の瀬戸際ぎはに

智恵子はもとの智恵子となり

生涯の愛を一瞬にかたむけた

それからひと時

昔山巓でしたやうな深呼吸を一つして

あなたの機関はそれなり止まつた

写真の前に押した桜の花かげに

すずしく光るレモンを今日も置かう


高村光太郎

「レモン哀歌」


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人生の香り No42

2015.06.29



薔薇110 


薔薇104 


おてんと様のお使いが

揃って空をたちました

みちで出逢ったみなみ風

何しに どこへ とききました


一人は答えていいました

この明るさを地に撒くの

みんながお仕事できるよう


一人はさもさも嬉しそう

私はお花を咲かせるの

世界をたのしくするために


一人はやさしく おとなしく

私は清いたましいの

のぼる反り橋かけるのよ


残った一人はさみしそう

私は影をつくるため

やっぱり一しょにまいります


金子みすゞ

「日の光」


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人生の香り No41

2015.06.28



薔薇89 


薔薇87 


むかしむかしは なんともいえない

すてきな匂いが どこにもあった

学校帰りの 裏道は

空気の匂いが あふれてた

お寺のがけには 青ごけの

涼しい匂いが ならんでた

遊びによくくる 友達は

あんずの匂いが いつもした

おしゃべりしだすと たまらなく

鼻へと匂いが とびこんだ

ちいさいかわいい 小川には

メダカの匂いが 流れてた

手あみでしゃくうと 手首まで

うれしい匂いが しみこんだ

さよならあばよの ひぐれには

羽虫が匂いを 夜にした

まばたきしている 灯りには

ごはんの匂いが ふくれてた

むかしむかしは なんともいえない

すてきな匂いが どこにもあった


サトウハチロー

「むかしは どこにも匂いがあった」


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人生の香り No40

2015.06.27



薔薇108 


薔薇107 


しばし羽を休めた枝が

細すぎて折れるかと思えても

それを感じながら

いざとなれば飛べばよいと

気楽に歌い続ける

鳥のようであれ


ヴィクトル・ユーゴー


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人生の香り No39

2015.06.26



薔薇106 

 
薔薇109 


太陽 月 星

そして

雨 風 虹 やまびこ

ああ 一ばん ふるいものばかりが

どうして いつも こんなに

一ばん あたらしいのだろう


まど・みちを

「どうして いつも」


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人生の香り No38

2015.06.25



薔薇91 


薔薇90 


幸福は幸福の中にあるのではなく

それを手に入れる過程の中だけにある


フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー


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人生の香り No37

2015.06.24



薔薇102 


薔薇101 


人生には二通りの生き方しかない

ひとつは

奇跡など何も起こらないと思って生きること

もうひとつは

あらゆるものが奇跡だと思って生きること


アルベルト・アインシュタイン


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人生の香り No36

2015.06.23



薔薇93 


薔薇85 


物心ついたころ

大切にしていた昆虫図鑑

キャベツ畑の友だちの隣

何時だって君は眩しかった

青空のひと筆書き

幾度も幾度も胸に描いて

遥かな南に恋していた

ずっと先の夏

僕のみちは島につながり

夕なぎの花密む茂み

君に出逢った

小さな僕の想いを超えて

たわわに真白いカンバス

緋色の三角形はくらくらして

僕は息が出来なくなった

それは無限の陽の光を

エネルギーに換えて

神の国まで舞い上がって

僕の夢から 消えた



村松健

「ツマベニチョウ」


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人生の香り No35

2015.06.22



薔薇100 


薔薇92 


もしもおまえが

よくきいてくれ

ひとりのやさしい娘をおもうようになるそのとき

おまえに無数の影と光の像があらわれる

おまえはそれを音にするのだ

みんなが町で暮らしたり

一日あそんでいるときに

おまえはひとりであの石原の草を刈る

そのさびしさでおまえは音をつくるのだ

多くの侮辱や窮乏の

それらを噛んで歌うのだ


宮沢賢治

「告別」より抜粋


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人生の香り No34

2015.06.21



薔薇99   


薔薇86  


私たちが生きるよりどころとする

人間らしい心のおかげで

優しさ 喜び 恐怖心があるおかげで

名もない小さな花を見てさえ

感情を超えた深い思いがしばしば浮かぶ


ウィリアム・ワーズワース


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Author:りら

写真は初恋と同じだね
撮る度ごとに心煌めく

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